淋しさのセレナーデ──万琴視点

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引き止められなかった。 言葉の一つ一つが重たく僕にのしかかって動けなかった。 透の諦めたような、吹っ切れたような、今まで見たことないような冷たい目…。 いつも笑っていた透は、僕が壊してしまった。 いなくなった後、その場に座り込んで、どんどん涙が溢れて止まらない。 自分で思っていたよりも、透が好きで、自分で思っていたよりも、他人との行為が虚しいのか今だから分かる。 だけど泣いたって状況は変わらない。 可能性はゼロじゃないなら、わずかでも残っているなら、可能性が全部なくなるまでやってみないと! 僕は自室に戻って、書類を入れた引き出しを開ける。 確かルームシェアの契約の時に、実家の住所があったはず。 「う~ん、福岡か…。ちょっと遠いな…」 でもとにかく、やれることはやってみよう。 そこそこの荷物なら、実家に帰った可能性が高い。 いきなりマンションの部屋を借りるとかはないと思うけど。 不安ばかり募って準備がなかなか進まない。 それでも透に逢いたい気持ちは全然揺らがないのだから、僕はどれだけ透が好きなのか、ちょっとおかしくて笑ってしまった。 「お久しぶりです。ちょっと福岡に行く用事があるんですけど、最終便のチケット誰か持ってます?」
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