淋しさのセレナーデ──万琴視点

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「すみません、空港まで送ってもらって」 「かつての愛人の真剣な頼みだからな。お前を本気にさせる男なら、悪い気はしないな」 「本当に不思議です。ここまで僕が本気になるなんて…。普通のサラリーマンなんですけどね」 僕を空港まで送ってくれているのは、かつて僕を愛人として面倒を見てくれたヤクザの若頭。 そんなに怖い人でも悪い人でもないから、僕は彼を信頼している。 信頼はしているけど、恋愛感情はない。 というか、恋愛感情は全部透に持っていかれてしまって、何をするにも透のことを考えていたような気がする。 透とすごした日々をぼんやりと思い出してみるけど、いつも僕のことを考えてくれていたんだなと分かり、何だか感謝の念しか湧いてこないんだけど。 さて、福岡に着いたけど、今日はもう電車もバスもないみたいだし、タクシーは目的地の明確な場所が分からないから無理。 仕方ない、今日はネットカフェに泊まって、目的地を調べたりして朝を待とう。 さすがネットカフェ。 調べものが捗る。 「あれ?透が住んでるのは福岡市じゃないのか。電車で行けるみたいだし、分からなくなったら、駅員さんに訊けばいいよね」
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