32人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「すみません、空港まで送ってもらって」
「かつての愛人の真剣な頼みだからな。お前を本気にさせる男なら、悪い気はしないな」
「本当に不思議です。ここまで僕が本気になるなんて…。普通のサラリーマンなんですけどね」
僕を空港まで送ってくれているのは、かつて僕を愛人として面倒を見てくれたヤクザの若頭。
そんなに怖い人でも悪い人でもないから、僕は彼を信頼している。
信頼はしているけど、恋愛感情はない。
というか、恋愛感情は全部透に持っていかれてしまって、何をするにも透のことを考えていたような気がする。
透とすごした日々をぼんやりと思い出してみるけど、いつも僕のことを考えてくれていたんだなと分かり、何だか感謝の念しか湧いてこないんだけど。
さて、福岡に着いたけど、今日はもう電車もバスもないみたいだし、タクシーは目的地の明確な場所が分からないから無理。
仕方ない、今日はネットカフェに泊まって、目的地を調べたりして朝を待とう。
さすがネットカフェ。
調べものが捗る。
「あれ?透が住んでるのは福岡市じゃないのか。電車で行けるみたいだし、分からなくなったら、駅員さんに訊けばいいよね」
最初のコメントを投稿しよう!