淋しさのセレナーデ──万琴視点

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ネットカフェから出て、電光掲示板や駅員さんに訊いて、透の実家がある町に向かう。 別に透の両親に挨拶するワケじゃないのに緊張してきた。 電車の揺れは僕の心臓の鼓動のように振動を伝えてくる。 しばらく電車に揺られ、目的地に着いた。 福岡市ほどじゃないけど、なかなか大きい都市なのかも。 とにかく後は透を探すだけなんだけど、透の実家に行った方がいいかな? 全然面識がないから、急に行っても怪しまれるかも。 どうしようかと悩んでいると、透によく似た姿の男性が目の前を横切る。 よく似てるんじゃない、透本人だ! 「透!!」 「え!?万琴さん!?」 めちゃくちゃ驚いてる。 僕がここまでくるなんて思ってなかったんだろうけど。 「万琴さん、何でここに?だって…」 「透に逢いたくて、ここまで探しにきちゃった♪」 「帰れとは言えませんね…。取りあえずどっかで何か軽く食べませんか?色々とちゃんと話をした方がいいと思うし」 「分かった。ここまできてだんまりはおかしいよね」 透と並んで歩くと、不意に左手が透の右手に触れる。 いつもなら、手を繋ぐんだけど、今はそういう気持ちにはなれないはず。
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