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氷上の王子様
◎氷上の王子様
智也の隣りに座っている男が、西 徹という人のようだった。
「よぉ?! 玲子。こっちこっち!」
明るく声を上げ、立ち上がって大きく手を振る智也。
隣りの男は、私の方は向かずに窓の外を眺めている。
近づいてみても、視線の合わない西を眺めた。
白いシャツにブラックのスーツ。
座っているが、窮屈そうに組んでいる脚をみると背は高い人のようだ。
髪は、短め。顔は、ぱっと見たところ、たぶんイケメンなんだと思われた。
私は、智也以外の男をかっこいいとかイケメンだとか思った事が無かった。だから、西と言う男の事も何とも思わなかった。
智也以外の男は、男であって男では無い。
ーーーでも、この格好。
これで、黒いネクタイしてたら
お葬式みたい。
なんとなく可笑しくて笑いそうになった。
慌てて笑いそうになった口を手で覆ったところで西と初めて目が合った。
無表情な冷たい瞳だった。切れ長のひとえ瞼。一瞬、背筋が凍るほどの怖さも感じた。
ーーーなに? この人……。こんな冷たそうな人を私に紹介するの? 智也。
助けを求めるように智也を見た。智也は、太陽みたいに明るい笑顔を私に向けた。
「まあまあ、座れよ」
立ち上がって、私の肩に手を置いて智也は、あろうことか私を西の隣に座らせた。
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