60人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
琥珀色の季節
◎琥珀色の季節
智也との運命的な出会いのエピソードを話すには、かれこれ14年前の10月末までさかのぼる必要がある。
似たような毎日を過ごしていた高校からの帰り道だった。
琥珀色に彩られた木々の中で銀杏の葉がたくさんあるところで滑り、私は自転車ごと派手に転んだ。
「いたたたっ」
膝には、擦り傷が出来て赤い血が滲んだ。
ついてない。恥ずかしい。
そう思って早々に立ち去ろうと
自転車を起こしかけた時に
「大丈夫? かなり派手に転んでたけど」
そう言って自転車を起こすのを手伝ってくれたのが智也だった。
「すいません。恥ずかしいっ、あ、ありがとうございます」
おそらく赤面していたと思う。
「うん。どういたしまして。あ、血が出てる」
同じような年回りの男の子に膝をみれらることがひどく恥ずかしかった。
「あっ、だいじょうぶなんで……」と言いかけたときには、もうティッシュを出して智也がしゃがんで血を拭いてくれていた。
それから智也は、こまったように顔をしかめた。
最初のコメントを投稿しよう!