俺たちの〝大事なもの〟

4/12
前へ
/32ページ
次へ
「夏樹、お前、俺たちの大事なものをこんなにしてくれて、タダで済むと思うなよ」  大事な、もの。  俺たちの。  なにの、こと?  顔を上げようとした美夕の身体が、掛けられていたブルゾンに包まれ抱き上げられた。 茶トラの猫も一緒に。  廊下が俄かに騒がしくなり、声が聞こえた。 「こちらですか! 香月さん!」 「香月さん、先程通報いただいた警察です!」 「どこの部屋ですか!」 「どちらに!」  夏樹の顔が蒼白になる。 「な……警察!?」 「兄貴のヤツ、通報したな」  美夕の目の前にある滉の精悍な顔が険しく歪む。 「しょっぴかれた先で今までの分まで反省しろや」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

277人が本棚に入れています
本棚に追加