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「夏樹、お前、俺たちの大事なものをこんなにしてくれて、タダで済むと思うなよ」
大事な、もの。
俺たちの。
なにの、こと?
顔を上げようとした美夕の身体が、掛けられていたブルゾンに包まれ抱き上げられた。
茶トラの猫も一緒に。
廊下が俄かに騒がしくなり、声が聞こえた。
「こちらですか! 香月さん!」
「香月さん、先程通報いただいた警察です!」
「どこの部屋ですか!」
「どちらに!」
夏樹の顔が蒼白になる。
「な……警察!?」
「兄貴のヤツ、通報したな」
美夕の目の前にある滉の精悍な顔が険しく歪む。
「しょっぴかれた先で今までの分まで反省しろや」
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