諦観の沼に差した光

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 掴まれた腕を振り、暴れ、懸命に懇願していた美夕だったが、ふっと差し込んだ意識が言った。  今後、だれがあなたを助けてくれるの。 ここから出られる事がないのだとしたら?  拒もうと全身に入れていた力が抜けた。 「お、美夕ちゃん案外素直じゃねえか」  笑う夏樹を美夕は涙を溜めた目で睨んだ。  あなたに屈した訳じゃない。 わたしは今、この瞬間死んだの。 だから、どうにでもするといい。 「じゃあ、美夕ちゃん一緒に気持ちよくなろうな」  不快な笑い声が部屋中に響き渡り、注射針が美夕の腕に当てられた。  もう、終わりだ。  美夕が目を固く閉じた時だった。
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