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白石さんは薔薇の花をじっと見つめたまま立ち竦んでいた。
無理もない。
薔薇の花言葉は本数によって違う。
三本の薔薇は、「愛しています」
突然の顔見知りの客からの告白に戸惑うのは当然だ。
困らせてしまうのはわかってた。
それでもどうしても伝えたかった。
この想いを花に込めて。
「…突然すみませんでした。今までありがとうございました。お元気で………さよなら」
さよなら、白石さん
店内に漂う花の香りが鼻を擽ぐる。
白石さん、貴女は花のような人でした。
別れを告げて店の外に出ようとした時、
「……っ待ってください…」
呼び止める声が後ろから聞こえた。
はっと振り向くと白石さんと目が合った。
白石さんがゆっくりと口を開く。
「花だけじゃなくて、気持ちも受け取ってもいいですか……?」
一瞬思考が止まった。
言葉の意味を理解できず、固まる。
それは…どういう…
意味でしょうか…?
問いかけようと口を開けようとした時、
「……私も、貴方のことが」
そんな信じられない言葉が耳に飛び込んできた。
「え…、え……!?」
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