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食事を終えて、マリーにトートバッグに入ってもらって、私たちはホテルの中庭へと移動した。
そこには、淡い色から濃い色まで数種類の八重桜が沢山咲いていた。
「うわぁ……」
どの木もほぼ満開でとても綺麗で……、思わず、そんな感嘆の声が漏れてしまった。
「ね、素敵でしょ?」
「はい! 想像以上でした!」
建物から離れて少し歩いて、人があまり居ない場所まで移動すると、トートバッグを少し開いた。
すると、マリーが瞳を今までにないくらいに輝かせて、頭上にある淡い色の八重桜を見上げた。
気に入ってくれたみたいでよかった。
人目があるから話しかけはしなかったし、マリーも声は出さなかったけれど、マリーたちの本当の言葉で、かすみちゃんと会話しているだろうと思われる声が時々小さく聞こえてきた。
出してあげられないのが残念だけど、マリーも楽しんでくれているようだ。
「次はいつ帰って来られるか解らないから、今回こうして日本の桜を見る事が出来てよかったわ」
故郷から遠く離れた国に住むって、どんな感じなのだろうか。
簡単には帰る事が出来ない場所に住むなんて、私には想像出来ない事だった。
だけど、どんなに楽しく暮らしていたとしても、きっと故郷を思って寂しくなる時はあるのだろうと思った。
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