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第4話 マリーの優しさ
私は、スマホの着信音が鳴っている事に気付いて、目が覚めた。
今、何時?
そんな事を思いながら、重い瞼をなんとか押し上げて、枕元に置いていたスマホを手に取る。
時間は3時45分。
画面に表示されているのは、母の携帯の電話番号だった。
「もしもし、どうしたの、こんな時間に……?」
「早希!? よかった、出てくれて。今ね、お婆ちゃんが倒れて病院に運ばれたって連絡が来て……」
「えっ……!?」
お婆ちゃんというのは、私の父方の祖母で、京都の老人ホームで生活している。
健康面は特に問題なくて、毎日楽しく暮らしていると聞いていた。
元々京都の人だから京都から離れたくないということで、老人ホームも京都にしたらしいのだが、私の実家は私が生まれる前から東京で、私も同じく都内で一人暮らし。
頻繁に会いに行ける距離ではないから、1年に1回くらいしか会った事がなかった。
そんな祖母が、脳出血で倒れたという。
夜中で電車がないから、朝一の新幹線で京都に向かうと言う両親と、途中の駅で合流する事にして電話を切った。
私は、ボロボロと涙が零れ出すのも気にせず、急いで旅行用のバッグを出して、必要なものの用意を始めた。
そして、ふと思い出して机の上を見ると、マリーはぬいぐるみになっていた。
そうだ、マリー、どうしよう……?
ひとりにして、また泣いて溶けちゃったら大変だし……。
でも……、連れて行って大丈夫かな……?
私の脳裏に色々な不安が過ぎったが、とりあえず自分の準備を全部して、出かける直前に、マリーが寝ているクッションとタオルごと、大きめのトートバッグにそっと入れて出かけた。
出かける頃には、気分も少し落ち着いてきていて、涙も止まってくれていた。
だけど、マリーをトートバッグに入れて電車に乗り、両親と合流して新幹線に乗り……、ずっと、いつマリーが起きるか気が気ではなかった。
運良く3人席が空いていたから私は窓際の席にしてもらって、そっとマリーの様子を見てみた。
だけど、まだマリーはぬいぐるみのままで、少しホッとした。
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