秋の始まり、あるいはペン先

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秋の始まり、あるいはペン先

机に広げた便箋 奥山を吸い上げてぽたりと落とす 滲むインク 綴る言葉 私の想い 誰に届けるでもない手紙を書き続ける 閉ざされた部屋の片隅 開かない窓 床に舞う埃 錠のかかった扉 傷付くことを恐れすぎた弱さの結論 ふいに手を伸ばす 僅かに広げた隙間から飛び込んでくる 電信柱に巻き付いた蔦の葉 風に揺らめく色づき始めた木々 上着を羽織った通行人はかつての私か 片隅で書いていた便箋に向き合い 震えるペン先から滲む奥山の色を眺める 文字も思いも歪みきったままで 折り畳む 小さく 小さく 窓に隙間を開ける 軋む音に恐怖を抱きながら風に委ねた言葉 誰に届くでもない手紙 誰に届けたいでもない言葉の羅列 ほんの僅かに出した勇気は 秋空に吸い込まれて消えた 気の向くままに流れ いずれ落ちる そのときは私の終わるときだろうか 再び閉ざした窓は僅かに軋み 閉ざした私を嘲笑う 瞳を閉じる 耳を塞ぐ 綴る想いを失くしたインクは零れ ペンは勝手に動いている 瞳を閉じる 耳を塞ぐ 傷付くことを恐れすぎた 私の末路 ※タイトルは、タグ使用時のお題です 使用タグ #テキトーなタイトル置いたら誰かが引用RTで内容を書いてくれる
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