壊れたものの美しさ

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壊れたものの美しさ

誰かが落とした硝子細工が砕けた 飛び散る破片が光を浴びて煌めいていた 嘆く人の涙すら美しい事を知った その光景が忘れられない 自分が愛でているものを壊してみたい その欲望が私を蝕む 大切に慈しんでいた世界を壊してみよう 信心深い私の愛し子達の壊れる様は 想像以上の美しさを放っていた だが荒れ果てた世界をみた瞬間 美しいと感じたのは壊れたものではなく 壊してしまった苦悩を滲ませた者であったと 気づいたときには遅すぎた 全てが消え去った世界を眺め 私は創生の力を失ったことを知る 再び創り壊させる事も叶わないのか 失望し嘆き続ける私の耳に どこか遠くでくすりと嗤う声が聞こえた気がした ※後書き※ ばけもののうた タグを使用しています ばけもののうた で、書き下ろすのは久々です
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