雨の日のこと

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雨の日のこと

目を閉じて 鼓膜に神経を集める 拾う 打つだけの水が旋律を奏でる瞬間を 開く 五線譜の代わり 八本の骨の上に貼られた布を 強まり 弱まり 音が変わる くるりと回す 飛沫が空に舞う ぴちゃりと地に落ちて形を崩す ふと まるで✕✕✕✕のようだと気づく 五線譜代わりに広げた布は あぁなんてことだ 無邪気に奏でた音色は水の断末魔だ 心を明るくしたオペレッタは 陰鬱としたアリアに様変わりしてしまった あぁ なんてことだ 布を伝う滴も 降り注ぐ音も 何一つ美しいと思えなくなってしまった 耳を塞ごうにも片手は塞がり 布を閉じればずぶ濡れてしまう しかし 純粋に楽しむ気にはなれないだろう 跳ねて 振り回されて 飛んだ 無数の滴に思いを馳せながら せめて地面に近づけようとしゃがみこむ ぼぼぼ 布を打つ水滴は気にするなと跳ねては落ち 足元に波紋を広げてつきていく 楽しめなくなった私だけを取り残して 使用タグ 深夜の二時間作詞 傘 星橙の詩
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