小鳥

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小鳥

唄を奏でることがなくなった小鳥を飼い続けている 籠の扉を開けたままでも飛び立たたず 外に焦がれる本能も失った哀れな小鳥 綺麗に奏でる声が好きだった 外を知りたいと羽ばたく真似事をする健気な姿が好きだった 少しずつ縮まる距離が好きだった 羽ばたきを忘れたのはいつからだったか 奏でることを止めたのはいつからだったか 随分と昔で忘れてしまった 忘れたままにいつまでも色褪せない思い出に浸り もう一度、もう一度 叶わないだろう夢をみている 唄を奏でることがなくなった小鳥を飼い続けている 目覚める時間も短くなった白く細い小鳥を かさついた掌で羽根を撫でる もう一度、もう一度 壊れた鳥籠を包む薄布ごと抱き締めて目を閉じる 籠に入れる前 自由に羽ばたき奏でていた姿に見惚れ なにをしても手に入れようと誓った あの日の出会いをもう一度…… 巻き戻され再生される走馬灯 小鳥、小鳥、可愛い小鳥 もう一度、もう一度 終わる前に聴かせておくれ 使用タグ 詩 星橙の詩
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