キッチン

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キッチン

背中に感じる視線も 空気の流れを意識して調節する火加減も 不慣れなことを隠して行うぎこちない会話も あなたは知らない 背伸びをしたくなったのだ 少しだけ胃袋に流し込むだけの存在に意味をもたせたくなった ただ、それだけなのに 震える指先もこっそりと行程を確認する目も 背中を伝う汗もしらない ありふれたものを作るだけで こんなにも緊張するなんてしらなかった 損をしていただろうか? いい匂いだと笑うあなたが そんなにもいい顔をしていたことすらしらなかった 勿体ない 勿体ないし、悔しいから 野菜を大量に投入したラーメンでそんなにも喜ぶなら もう少し腕を磨くのも悪くない 昼下がり、キッチンの片隅で笑みが浮かんだ 使用タグ 星橙の詩 詩
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