夜を想う朝の一幕

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夜を想う朝の一幕

沸騰する音、新品の茶葉の匂い、白い蒸気 朝を始める囀ずり、光、風の揺らぎ 朝が始まる 一日が、途方もなく長い一日が 目を閉じて願う 夜の安寧、永い夢の世界 夜が来る、駆け足で、包みに来る 朝が来る、駆け足で、剥ぎに来る 包み込まれたいのだ 暑さはいらない 静謐な空間に 包み込まれたいのだ 眩しさはいらない 仄暗い空間に ままならない現実は容赦なく 故に不必要な朝に対する恨めしさを 押し殺す その先に その後に 安らげる居場所に別れを告げる 一度告げてしまえば逃げられないのだ 朝は、強く、長い 始まる朝の憂鬱を入り込む風が流していく 新品の茶葉 封を切る悦び 抽出された味 瞳を閉じる 夜はまだ来ない #星橙の詩 #詩
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