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からかうような口調で賢吾が言うが、どんな顔をしているかまではわからない。月明かりすら入らないほど、この部屋は家の奥にあるのだ。
賢吾の大きな手に頬を撫でられ、うなじをくすぐられる。穏やかな手つきだが、和彦としては、昼間、秦にされた行為を指摘されるのではないかと、気が気でない。また、アルコールのせいで眠り込んでいたわけではないことも。
悠然と身を横たわらせた大蛇の前では、何もかも告白してしまうことが、自分の身を守るもっとも最善の方法のように思えてくる。
「やっぱり――」
和彦が口を開こうとした瞬間、賢吾の手が頭にかかり、引き寄せられた。息遣いを肌に感じたときには、唇の端にキスされた。そして、今度はしっかりと唇を塞がれる。
「……何もしないんじゃなかったのか」
「まだ、ヤクザの言うことを信じるのか、先生」
呆れて言葉が出なかった。それをいいことに、賢吾の唇が顔中に押し当てられる。最初は身構えていた和彦だが、柔らかく唇を啄ばまれているうちに、つい応じてしまう。
舌先を触れ合わせ、それだけでは物足りなくて、唇と舌を吸い合う。すると、熱い腕にしっかりと抱き締められた。思わず吐息を洩らすと、賢吾の唇が耳に押し当てられる。
「子守唄でも歌ってやろうか?」
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