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和彦の物言いたげな表情を、笠野なりに解釈したらしく、笑いを含んだ声でこう言った。
「ヤクザの組長の本宅で、鬼は外って言うのも、妙なもんですよね」
「ちょっとだけ、そう思った」
「こういう家業だからこそ、災いは追い払いたいと、どの家よりも強く願うんですよ。長嶺組長は、長嶺組の柱だし、千尋さんは次の柱だ。目に見えるものなら、わたしらがいくらでも盾になって防ぎますが、厄介なのは、目に見えないものです。だからこそ、こういう行事でも大事にしたいんです」
話しながらも笠野の手は動き続け、炒り終えた豆を器に入れる。和彦がやってくるずっと前から作業をしていたらしく、すでに他の器にも節分豆が盛られていた。その器の一つをカウンターに置き、笠野は和彦に勧めてきた。
「これは先生の分です。晩メシのあと、みんな揃ってからまく予定なので、ちょっとぐらいつまみ食いしてもらってもかまいませんよ。そう美味いもんじゃないですけど」
当然のように、和彦も豆まきのメンバーに入っているようだ。笠野の口ぶりに、ちらりと笑みをこぼした和彦は、まだほんのりと温かい豆を少し手に取り、さっそく味見する。
「……香ばしくて美味しい……」
和彦がぽつりと感想を洩らすと、笠野は満足そうに笑う。
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