番外編 拍手お礼11

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「座ってゆっくり味わってください。わたしはこの節分豆を神棚にお供えしてきますので、それからお茶を入れますね」  器を手に笠野がダイニングを出て行き、和彦は一人となる。だからといって人気がないかといえばそうではなく、夕方となり、外から戻ってきた組員たちが慌しく廊下を行き来しているため、なかなかにぎやかだ。  その様子を眺めながら、和彦は豆を口に放り込む。  夕飯を食べに来いと賢吾に言われて立ち寄ったのだが、もしかするとこの行事に参加させることが目的だったのかもしれない。  テーブルについた和彦が一粒ずつ豆を食べていると、突然、廊下から聞こえていた話し声が途絶える。そしてすぐに、今度は出迎えの声が上がった。見なくとも、誰が帰宅したのかはわかる。  自分も廊下に顔ぐらい出すべきだろうかと思った和彦だが、心配するまでもなく、相手のほうからダイニングにやってきた。 「なんかいいものを食わせてもらってるか?」  開口一番の賢吾の言葉に、和彦はムッと顔をしかめる。 「ぼくは、腹を空かせた子供か」 「笠野の口癖になってるらしいぞ。買い物に出かけるたびに、これは先生が好きそうだ、と言うのが。どうやら先生は、食い物を与えてやりたくなる空気があるようだな」 「……節分の豆を食べているだけで、どうしてここまで言われないといけないんだ」     
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