番外編 拍手お礼14

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 だからといって、この男に好意的になる理由はない。なんとなくだが、千尋は南郷が苦手だった。  儀礼的な挨拶を返した千尋に、守光が目配せしてくる。その意味を理解して、湯のみを手に立ち上がった。 「向こうの部屋でテレビ観てくる」  そう言い置いて千尋がダイニングを出ると、すぐに二人がぼそぼそと話す声が聞こえてきた。ただし、会話の内容まではわからない。おそらく、和彦を新年会の席に呼ぶための相談だろう。  守光が行動を起こすとなれば、和彦との対面はほぼ確実なものとなるだろう。そこでまた、和彦は長嶺の男とさらに深く関わるようになり、いっそうこの世界から抜け出せなくなる。  総和会会長へ新年の挨拶に向かうと知ったとき、和彦がどんな顔をするか、それを想像しただけで千尋の口元は緩んでくる。  年が明けてから、和彦を中心に大きなうねりが生まれそうだと、確信めいたものが千尋にはあった。  長嶺の血を引く男の直感は、けっこう当たるのだ。
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