番外編 拍手お礼16

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『あんたがそこまで言うんなら、よっぽどいい女みたいだな』 「……さあ、どうだろうな」  思わず鷹津が浮かべたのは、苦い笑みだった。  浮気調査を専門にしているのには、相応の理由がある。  レポート用紙数枚にまとめられた調査結果に改めて目を通しながら、調査事務所の仕事ぶりに鷹津は素直に感心していた。そもそも仕事ができない相手なら、こうもつき合いが続くはずがないのだ。  張り込みと尾行を得意としている、という宣伝文句は、決して大げさではない。引退した刑事を何人か雇っているのも、調査員たちに技術的な指導をするためだ。  ちなみに、一度は刑事をクビになりかけた鷹津だが、調査事務所の所長から勧誘されたことはない。長年、暴力団組織を相手にしてきた刑事は独特の空気を放ち、堅気の人間に紛れての尾行には向かないのだそうだ。  あまり腹の足しにならないサンドイッチを口に押し込み、缶コーヒーを飲み干して、味気ない昼メシは終わりだ。早めの昼休みをとると言って本部を抜けてきたので、のんびりとはできないのだ。  レポート用紙を助手席のシートに放り出し、鷹津は車を移動させる。     
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