番外編 拍手お礼18

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『これから捕獲に入る。中嶋、変わったことはないか?』 「平和なもんです――と、いつもよりは盛り上がってますか」 『ああ……、今日はバレンタインだったな。俺たちには関係ない話だが』  短いやり取りの間、電話を通して伝わってくるのは、殺伐とした空気だ。 『数分のうちに片をつける。終わり次第、また連絡する』  電話が切れると、圭輔は慎重に辺りをうかがいつつ、携帯電話をポケットに仕舞う。  平和なカップルたちは気配すら感じ取れないだろうが、このホテル街のある場所では現在、捕り物が行われている。ただし、捕らえるほうも捕らわれるほうも、ヤクザだ。  総和会第二遊撃隊はその名の通り、状況に応じてどんな仕事でもこなす。幹部会のための情報収集が主となっているが、総和会会長のために〈猟犬〉となることもある。今夜の仕事はまさにそれだった。  総和会に名を連ねているある組から不義理者が出たのだが、権力抗争の火種となりうる状況から、処断は総和会へと一任された。つまり、組の中で禍根を残さぬよう、総和会が憎まれ役を引き受けたのだ。逃げた不義理者は所在を点々としていたが、とうとう居場所を突き止めて、今夜、身柄を確保することになった。     
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