番外編 拍手お礼21

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 今日は誰とも会いたくないし、話もしたくない――。  ぼんやりとそんなことを考えながら、漫然と外の様子を眺め続ける。普通の生活を送っている人たちなら、こんなに鬱陶しい天気の日にも、きちんと通勤し、もしくは通学をするのだ。対する自分は、と我が身を振り返り、一層気分が沈み込む。  雨自体は嫌いではないが、こういう状況で眺める雨の景色も、雨音も、陰鬱な気分に拍車をかけるだけだ。  早く止めばいいのにと、短くため息をついた和彦はごろりと寝返りを打ち、目を閉じる。何もやる気が起きないから、とりあえずもう一眠りしようというのは、非常に怠惰に思えるが、とにかくベッドから出たくないのだから仕方ない。  何度かベッドの上を転がっているうちに、緩やかに眠気がやってくる。和彦はウトウトとしながら、夢か現実なのか、雨音を聞いていた。  強い雨が、何かを叩いている。聞き覚えのある音だと、半分眠りながらも、緩慢な思考を働かせた和彦は、やっと記憶を手繰り寄せる。雨が、広げた傘を叩く音だった。  どうしてこんな音が聞こえてくるのかと疑問に感じたが、意識が夢の入り口にあるのだと思ったら、すんなりと納得できた。     
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