番外編 拍手お礼30

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 さきほどまで厳しい表情で話し合っていたのがウソのように、中嶋が軽い茶々を入れ、三田村は渋い表情で返す。医者絡みのトラブルがどうなったかはともかく、少なくとも中嶋の機嫌はマシになったようだ。 「俺はこれから組事務所に顔を出す。もしかすると、本宅――組長から何か伝言があるかもしれないからな」 「……大事になると思いますか?」  中嶋の問いかけに、三田村の顔からまた感情がなくなる。 「大事にはなるだろうが、どの程度に収めるかは、長嶺会長の腹一つだと思う」 「長嶺〈組長〉ではなく?」 「命知らずな質問だな、中嶋。……聞かなかったことにしてやる」  三田村から向けられた暗く冷たい眼差しに、傍らで見ていた加藤の首筋が寒くなる。中嶋は肩をすくめたあと、三田村に頭を下げて踵を返す。加藤も慌ててあとを追いかけようとして、三田村に呼び止められた。  スッと名刺を差し出され、反射的に受け取ってしまう。名刺には、三田村の名だけではなく、組での肩書きと携帯番号が印刷されていた。 「気が向いたら連絡してこい。メシを食いに連れて行ってやる。組の人間と接触するなと言われてるわけじゃないんだろ?」 「……はい。ありがとうございます」     
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