番外編 拍手お礼30

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 もっと気の利いた台詞を言ったり、喜びを表に出すほうがいいのだろうが、あいにく加藤はそこまで器用ではない。ぎこちなく頭を上げるのが精一杯だったが、三田村は気を悪くした様子もなく、早く行けと中嶋のほうを指さす。  もう一度礼を言った加藤は、走って中嶋に追いつく。振り返った中嶋が、ニヤリと笑った。 「あの人、いい人だから、懐くなよ」 「いい人だというのは、なんとなく……」 「デキるヤクザだが、ヤクザらしくないヤクザでもある。――どういう人なのか、そのうちいろいろと耳に入るだろうがな」  意味深な中嶋の言葉が気になったが、加藤の意識は、次の中嶋の言葉に奪われた。 「今のところ、俺が気兼ねなく使えるのは、お前ぐらいしかいないからな。三田村さんの下で働きたいです、なんて言われると、困る」 「困りますか……」 「困るな」  元ホストのヤクザは、女タラシどころか、人タラシだ。加藤は、自分の体温がわずかに上がったことを認識しつつ、ぐっと奥歯を噛み締め、胸の奥から沸き起こったわけのわからない感情の高ぶりを抑える。 「お前の機嫌を取っておくために、ラーメンを奢ってやる」 「……それ、中嶋さんが腹減ってるだけでしょ」 「こういうとき、可愛げのある後輩は、嬉しいです、と言っておけばいいんだよ」     
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