番外編 拍手お礼31

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番外編 拍手お礼31

 医局に戻ってきた和彦は、やれやれと思いながらゆっくりと首筋を揉む。一仕事を終えてほっとしたいところだが、この一時間後に、また次の手術を控えているのだ。 「お疲れだな、佐伯」  そう声をかけてきた澤村も、和彦同様、顔に疲労の色を滲ませている。普段であれば、午前中は患者のカウンセリングを行い、午後から手術室に入るスケジュールとなっているのだが、ここのところは、午前中から手術室に入るパターンが多い。クリニックとしては、いわゆるかき入れ時に入っているのだ。 「寒くなってくると、人は見た目を変えたくなる心理に陥るんだろうか……」  電子カルテを開きながら和彦が呟くと、隣のイスに腰掛けた澤村が微妙な表情を浮かべる。和彦が本気で言ったのか、冗談を言ったのか、判断がつかなかったのかもしれない。 「休みが続く時期は、いつもこんなものだろ。春休みなんて特に、新しい生活を始める前に、と駆け込み予約が多くなるし」 「なんとなく、それはわかるんだ。ただ、冬休みなんて、そう長くないだろ。この寒い時期に、どういう心境から、顔の雰囲気を変えてみたくなるのか――」     
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