番外編 拍手お礼31

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 ただ、物言いたげな表情はしていたらしく、目敏くそれに気づいた千尋が、意味ありげな眼差しを寄越してくる。 「先生もしかして、妬いてる?」  千尋の思いがけない言葉に目を丸くした和彦だが、すぐに苦笑を洩らして茶色の髪をぐしゃぐしゃと掻き乱してやる。 「妬いてほしかったら、もう少し大人になれ。お前はまだまだガキだ」 「いやいや。俺がガキっぽく振る舞うのは、先生の前だけだって。普段は、ピシッと決めてるんだから」 「どうだかな……、と言いたいところだが、長嶺の男は食えないからな。あー、怖い、怖い」  最後の台詞は棒読みで言ってやると、千尋がムキになって反応する。これすら、あえて『ガキっぽく』振る舞っているのだとしたら、長嶺の男は本当に怖い。  和彦は、千尋の頭を撫でてやりながら、ついこんな頼みごとを口にしていた。 「そのうち、お前の成人の日の写真を見せてくれ」  騒いでいた千尋が、一瞬にして大人びた男の顔になり、和彦と額と額を合わせてきた。 「いくらでも見せるよ。俺が生まれた頃からの写真も、全部見て」 「……たくさんあるんだろ? 見終わるまで、時間がかかりそうだな」 「いいじゃん。どれだけかかっても。――先生ずっと、俺と一緒にいるんだし」  長嶺の男が本当に怖いと思えるのは、こんな言葉をさらりと言われたときだ。     
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