番外編 拍手お礼32

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番外編 拍手お礼32

 客を出迎えるために一階に降りた二神(ふたがみ)は、すぐに異変に気づいた。  普段は意図して人を置いていないエントランスホールに、数人の男たちの姿があった。外をしきりと気にかけている様子から、総和会の幹部の誰かが訪れるのだろうかと思ったが、それにしては、緊張感はない。  だからといって気が緩んでいるわけではなく、むしろ、か弱い者を労わるかのような気遣いを、男たちの眼差しから感じた。  総和会本部に詰めている男たちから、そんな眼差しを向けられる人物はごく限られている。二神の知る限りでは――二人。  二神の勘は当たっていた。自動ドアが開き、二神が知るうちの一人が姿を現す。  エントランスホールで出迎えた男たちは、仰々しい挨拶ではなく、黙然と頭を下げる。相手の地位が自分より高いか低いかは関係なく、〈彼〉にはそう接するよう、この本部の主に申しつけられているのだ。決して怖がらせることのないように、と。     
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