番外編 拍手お礼32

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 途中で買い求めた洋菓子の箱を手に、二神はインターホンを鳴らす。しかし、いくら待っても返事は返ってこない。こういうときの対応は決まっていた。  嫌な予感を覚えつつ、玄関のドアをゆっくりと引いた二神は、思わず声を洩らす。 「不用心な……」  鍵がかかっていなかったことに少しばかり憤慨しつつ、二神は挨拶をして靴を脱ぐ。廊下を歩いていると、ふわりと薬草の匂いが鼻先を掠めた。すっかりこの家に染みついてしまったらしく、そのことに二神は、わずかに胸が苦しくなるのだ。  庭に面している奥の部屋を覗くと、案の定、この家の主人の姿があった。戸を開けたまま、庭に屈み込んで何かしている。 「――そういう雑用は、我々に任せてくださいと言っているでしょう」  箱をテーブルに置いて二神が声をかけると、この家の主人であり、二神にとっての主人でもある御堂秋慈が顔を上げた。その顔を見て、二神は安堵の吐息を洩らす。秋慈の顔色がよかったからだ。機嫌も悪くはなさそうだ。 「庭の草引きのために、わざわざ人を呼べるわけがないだろう」 「あなたの顔を見るためなら、みんな喜んで駆けつけますよ」  世辞でもなんでもなく、本心からの二神の言葉に、秋慈は唇の端に笑みを刻んだ。     
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