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当の秋慈は、いまだに残る第一遊撃隊のことをどう考えているのか、これまで一言も、副隊長の二神に洩らしたことはない。
現在の二神は、総和会総本部の運営委員会の人間として、長嶺会長の居城となっている本部によく詰めている。請われるまま総和会に所属しているのは、踏ん切りがつかないせいだ。秋慈が第一遊撃隊の解散を命じるなら、それと同時に総和会を辞するつもりでいたが、その秋慈が何も言わない。
だから、期待してしまう。
「――そろそろ、お前たちのせいで太りそうになっていることを、本気で心配している」
正面のイスに腰掛けた秋慈が、二神が買ってきた洋菓子の袋を破りながら、そんなことを言う。二神はちらりと笑みをこぼした。
「あなたの食事制限がなくなったと聞いて、皆からの差し入れの量がすごいんでしょう」
「若い奴が来たら、持って帰らせるようにしているんだ」
「そりゃ、誰も彼も、御堂さんのところに寄りたがるわけですよ」
「まったく、ヤクザも、堅気もそう変わらないな。美味いコーヒーを飲みながらの、愚痴と世間話と、噂話が大好きだ」
自分で美味いと言いますかと、二神は手元のコーヒーカップを覗き込み、危うく出かかった言葉をぐっと呑み込む。ふと、あることに気づいた。
「噂話というのは……」
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