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「まあ、いろいろだ。わたしのところに来るのは何も、隊の人間ばかりじゃないからな。総和会の中も、いろんな人間がいる」
秋慈の物言いで、なんとなく見当をつける。総和会は、対外的には磐石の組織ではあるが、内部については一概にはそうも言えない。十一もの組を抱え込んでいる巨大な組織だからこそ、さまざまな人間がいるし、そこに利害も事情も生まれる。それでもしっかりとまとめ上げているのは、長嶺会長の凄さだ。
その凄さは、容赦のなさにも通じている。総和会の中で、長嶺会長に反感や敵意を抱く人間はいるだろうが、表立って悪し様に言う者はいない。よくも悪くも、今の総和会は長嶺会長のための組織で、それで上手く回っているのだ。
生まれた不満は胸の内で抱え込むか、信頼できる誰かにこぼすしかない。秋慈は、そういう意味で最適な人物だった。実際二神も、秋慈の世話をする名目でこの家を訪れては、総和会の様子を話していた。ただし、愚痴でも世間話でもなく、報告として。
この家にいながら秋慈は、総和会の事情通と言ってもいいだろう。
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