番外編 -縁-

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「同情してるんだ。よりによって、どうして長嶺の男に捕まったのかと。――君の家の男たちは、みんな怖い。自分がこうしたいと思えば、容赦がなく、手段を選ばない」 「だから長嶺守光は、総和会会長の座を手に入れた――と言いたげだな」 「事実だろ」 「ああ、事実だ。だが訂正させてもらうなら、長嶺の男の中では、俺はおとなしいほうだぜ」  ヌケヌケと、と心の中で呟く。秋慈は本気で、賢吾に捕まったオンナに同情していた。こんなに怖い男に執着され、想われていては、そのうち窒息してしまうのではないかと思うのだ。しかも、長嶺の男は賢吾一人ではない――。  秋慈は、長嶺賢吾とのつき合いが長く、だからこそ、長嶺家の事情にも多少通じている。しかし、現在のような状況は、さすがに想像が追いつかなかった。  狂っていると感じると同時に、淫靡で心惹かれる関係を、長嶺の男たちとオンナは持っている。  秋慈の心の内を見透かしたように、賢吾は絶妙のタイミングで語り始めた。 「――うちの先生は、見た目も中身も真っ当な人間だ。だが、どこかが壊れている。それが何かとは、俺も明確に言葉にはできないが、壊れているせいで、不安定なんだ。そのせいか、優しくて愛情深いが、どこか冷めている部分もある。そういう掴み所のなさに、振り回される。ときどきむしょうにムカつくときもあるが、それすら愛しい」     
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