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ここでなぜか賢吾が、意味ありげに秋慈の顔を眺めてくる。
「なんだ……?」
「いや、顔が整いすぎている人間は、どこか似た雰囲気を持つのかと思ってな。あんたと先生、顔の造りはまったく違うが、なんとなく感じが似ている。表情によって、ひどく冷たそうに見えるところとか。――男タラシのところも、そっくりだな」
賢吾を睨みつけて、秋慈は立ち上がる。話しているうちに、飲んでいたお茶が冷めてしまっていた。
お茶を淹れ直した秋慈が部屋に戻ると、これまでの砕けた様子とは一変して、真剣な――長嶺組組長として相応しい表情となっていた。背筋もスッと伸びている。
ようやく本題に入るのかと、秋慈は静かに息を呑み、イスに腰掛けた。
「――南郷の話は、聞いてないか?」
前置きもなしに賢吾が切り出す。秋慈は胸の奥でゾロリと蠢いた不快さを、率直に表に出した。
「南郷……、南郷桂のことか」
「俺たちの間で出る『南郷』といえば、第二遊撃隊隊長のあの男しかいないだろ」
賢吾の表情からは、南郷という男をどう思っているか、読み取ることはできない。ただ、快く思っていないことは、容易に想像できた。
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