番外編 -縁-

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「好き勝手をされちゃ、困るんだ。総和会の中だけで収めるならいいが、他人を使って、〈うちの者〉にちょっかいを出されると、臆病で慎重な蛇でも、ささやかに牙を剥きたくなるだろ」 「父子ゲンカに、他人を巻き込もうとしている君はどうなんだ」  冷めた声で秋慈が指摘すると、悪戯を叱られた子供のように賢吾は肩をすくめ、決まり悪そうに顔をしかめる。 「俺はこれまで、総和会とは必要最低限の関わりしか持ってこなかった。そんな俺が、総和会に対して持っているツテは、オヤジ絡みを除けば、あんただけだ」 「買い被りだ。わたしはもう、半分足を洗ったと思われている」 「そうは言っても、いまだにあんたを慕う連中が、頻繁にこの家に出入りしている。それに、総和会の名簿で確認したが、あんたの名前は、しっかりとまだ残っているぞ。〈あれ〉も」  腕組みをして賢吾を睨みつけていた秋慈だが、ふてぶてしく見つめ返されて、結局こちらが視線を逸らすことになる。 「――……ああ、君の話なんて聞くんじゃなかった」 「腐れ縁ってやつだ。お互い、手の内はわかってるじゃねーか。ごちゃごちゃ言ったが、俺が言いたいことは、たった一つだ。まだ四十歳だというのに、枯れた年寄りみたいな生活はやめろ。あんたは、筋者に囲まれて、ちやほやと崇拝されているほうが――色気が増す」 「その言い方はよせ。君に言われると、怖気が立つ」     
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