番外編 -縁-

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 部屋に一人となった秋慈は、ほっと息を吐き出すと、庭に視線を向ける。見慣れているはずの光景が、この瞬間、妙に新鮮に感じられ、ここで秋慈は、あることを察していた。  次の瞬間、勢いよく立ち上がると、隣の部屋に置いてある電話の子機を取り上げる。そして、ある人物へと電話をかけた。週に数回、この家に立ち寄っては身の回りの世話をしてくれている、秋慈の〈部下〉だ。 「――わたしの名で、緊急招集をかけてくれ。そして、人員を集められるだけ集めてほしい」  普段は冷静な部下も、さすがに電話の向こうで驚いている様子だが、秋慈の指示をすぐに復唱する。それから、控えめに質問をぶつけてきた。  秋慈は、自分でもわかるほど物騒な笑みをこぼして応じる。 「当然だ。〈第一遊撃隊〉隊長・御堂(みどう)秋慈の名で、招集をかけろ。隊を動かすんだ」  こう告げた途端、ゾクゾクするような興奮が体を駆け抜けた。そこで秋慈は痛感した。この家にこもっていながら、自分はずっと鬱屈していたのだと。見事に、賢吾に唆されたとも。  いつになく口が滑らかになった秋慈は、今度は自分が部下を唆す。 「今度こそ、第二遊撃隊と正面からぶつかることになるかもしれない。腹を括っておけよ」
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