番外編 -邪-

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 首筋に唇を這わせると、和彦が鼻にかかった声を洩らす。かつては、肌に触れるだけでくすぐったがって身を捩り、笑い声を上げていた和彦だが、もうそんな子供っぽい反応は見せない。微かに吐息を洩らし、肌に触れるたびに体が熱くなってきて、滑らかな肌が汗ばんでいく。  真也は浴衣を脱がせながら、肩先に強く吸いついた。一瞬見せた真也の激情を、聡い和彦はすぐに読み取ったらしく、ひそっと囁いてきた。 「もう、大浴場に行かないから、大丈夫だよ。……服で見えないところなら、跡をつけても」  思わず真也が顔を覗き込むと、あどけない表情で和彦が、頬にてのひらを押し当ててくる。そんなに自分はわかりやすいかなと思いながら、真也はありがたく、和彦の言葉通りにさせてもらう。  和彦の体から浴衣と下着を奪い取り、まだ少年っぽさを強く残した、細身でしなかやな体に思う様、唇と舌を這わせる。和彦の体のすべてを、真也は知っている。何度となく、全身隈なく味わってきたと自負していた。  和彦と体を重ねるとき、真也はいつも、見えない刻印を残しているつもりだ。今後、和彦が誰と肌を合わせ、愛し合おうが、里見真也という男が残した痕跡が消えないようにと。これは、大人の男が、庇護すべき少年に向けるにしては、ひどいエゴだ。しかし和彦はそれすら受け入れ、悦んでくれる。     
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