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番外編 拍手お礼3
落ち着かない――。
心の中でそう洩らした和彦は、慎重に寝返りを打ち、敷布団の端へと移動しようとする。するとすかさず、背後から伸びてきた両腕に捕えられ、引き戻された。
「そんな端っこにいくと、布団から出るぞ」
室内を覆う闇を震わせるようなバリトンは、わずかに笑いを含んでいるようだった。
抱き寄せられた和彦は、浴衣を通してもわかる賢吾の硬い体に触れる。エアコンによって程よく冷えている部屋にあって、賢吾の体温は熱源そのものだ。確かに人肌なのに、側にいると汗ばみそうなほどの熱いものを感じさせる。
それとも、賢吾を意識している和彦自身が生み出す熱なのか――。
「……やっぱり、自分の部屋に戻る」
「どうしてだ」
そう問いかけてきながら賢吾が、和彦の体に薄手の夏布団をかけてくる。さらに、腕枕まで提供してくれた。
「ぼくがいつまでも寝返りを打っていると、あんたが落ち着いて眠れないだろ」
「なんだ。俺を気遣ってくれているのか」
「そうじゃないっ。……ぼくも落ち着かないんだ」
「俺が怖いからか?」
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