番外編 -虜-

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番外編 -虜-

 総和会会長――つまり祖父との昼食から戻ってきた千尋は、組員たちに玄関で出迎えられる。一人暮らしのときは、部屋を出入りするのに人目を気にする必要もなく、そんな些細なことにすら感動を覚えていたものだが、実家に戻ってしまうと、この堅苦しい出迎えが普通なのだと思えてくるから怖い。  気前のいい祖父から、土産として持たされた折詰を、今本宅にいる組員たちで食べるよう告げて靴を脱ぐ。さっそく自分の部屋に戻ろうとした千尋だが、片手に掴んだままの封筒の存在を思い出し、階段にかけていた足を下ろす。祖父から書類を言付かっていたのだ。渡す相手は、千尋の父親である賢吾だ。  賢吾は長嶺組の組長。祖父は、長嶺組を含めた十一の組を統括している総和会の会長という肩書きを持っているが、この二人は、父子関係という以上に、ヤクザの世界での同志として深く結びついている。千尋の知らないところで、食えない大物ヤクザ二人、いろいろと動いているようだ。     
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