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番外編 拍手お礼6
革靴を履いた賢吾が、玄関のドアを開ける。すでに外には、護衛の組員たちが直立不動の姿勢で待ち構えていた。三田村は深々と頭を下げ、賢吾を送り出す。
「組長、お気をつけて」
「――三田村」
玄関を出るかと思われた賢吾に突然声をかけられ、三田村は反射的に頭を上げる。賢吾は、口元に薄い笑みを浮かべて言った。
「夕方まで、先生の側にいてやれ。さすがに機嫌が悪そうだったから、たっぷり甘やかしてやってくれ」
短く返事をした三田村が再び頭を下げると、ドアの閉まる音が玄関に響いた。しっかり十秒待ってから頭を上げたときには、もちろん賢吾の姿はなかった。
わずかに緊張を解いてから、三田村はリビングへと戻る。すると、ちょうど和彦もバスルームから戻ってきたところだった。賢吾の言葉通り、不機嫌そうな顔をしている。
「組長は帰ったのか」
「ああ。たった今」
「……あんたは、帰らなくていいのか?」
タオルで乱雑に髪を拭きながら、和彦がちらりとこちらを見る。三田村は、無意識に目元を和らげて応じた。
「先生の迷惑でなかったら、夕方まで一緒にいたいんだが……」
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