番外編 拍手お礼8

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番外編 拍手お礼8

 長嶺賢吾と相対して、反吐が出そうなほどの胸糞の悪さを覚える自分に、鷹津は奇妙な安堵感を覚えた。  昔から、この男が嫌いでたまらなかった。代々続く長嶺組の跡継ぎという、下衆のサラブレッドともいえる存在でありながら、卑屈とは無縁どころか、まるで紳士のように振る舞う厚顔ぶりだ。自信と傲慢が、上等なスーツを着込んでいる――と若い頃の鷹津はよく思ったものだ。  その下衆のサラブレッドは、期待された通りに長嶺組組長となり、着々と力を増している。  前組長もかなり食えなかったが、現組長は食えないどころか、必要とあれば人を食いかねない。そう言っていたのは、鷹津が所属する組織犯罪対策課の課長だったが、この表現はまだ生ぬるいかもしれない。  上等なソファに身を投げ出すように腰掛けた鷹津は、テーブルを挟んで正面に座る長嶺をじっと見つめる。この男には、敵意や殺気を込めた視線を向けたところで、無駄だ。暗闇で息を潜める警戒心の強い蛇は、意外に硬い鱗で身を守っており、多分、精神すらもその鱗で覆われている。だから、図太い。     
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