番外編 拍手お礼9

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番外編 拍手お礼9

 小さく咳き込んだ和彦は、喉の強い渇きを意識する。空気がひどく乾燥しているのだ。  いつもと違う部屋の空気、ベッドと枕の感触を、一つ一つ認識していくうちに、眠っていた頭が少しずつ覚醒し、ここが総和会の別荘の一室であることを思い出していく。  一泊旅行と称して、賢吾や千尋、護衛の組員たちとともにやってきたのだ。  賢吾の同業者たちがこの別荘に集まり、何事かを相談している中、和彦は千尋と外でのん気に雪遊びをしていた。それから三人で〈ゆっくり〉と風呂に浸かり、美味しい夕食をとったあと、静かな夜の時間を、アルコールを飲みながら過ごした。  和彦は千尋と同じ部屋に入り、それぞれのベッドで横になった――はずだ。 「暑い……」  もう一度咳き込んでから、和彦はぽつりと洩らす。  部屋の空気が乾燥しているのは、暖房のせいだ。和彦一人なら暖房を切って寝るのだが、同室の千尋に寒い思いをさせるのは可哀想だ。そう判断してつけたままにしておいたのだが、どうやら甘かったらしい。     
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