番外編 拍手お礼10

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番外編 拍手お礼10

 元日の行事を終えて、三田村はようやく休みと呼べるものを手に入れたが、仕事を抱えていない時間をどう使えばいいのか、毎年のように頭を悩ませる。  若いうちは、事務所に詰めていたり、組長や幹部たちの所用に借り出されたりと、何かしらやることがあり、組の仕事から解放されることはなかった。  すでに天涯孤独と言ってもいい境遇の三田村にとって、組とはすなわち、家庭のようなものなのだ。組の仕事に関わっていると、自分が必要とされていると実感し、安心できる。だからこそ、休みなく使われることが嫌ではなかった。  しかし、組の中で出世すると、そうもいかない。これまで抱えていた仕事は、若い者が引き受けることになり、三田村は一人、所在なく正月気分を味わってきた。――昨年まで。  長嶺組組長宅の玄関に足を踏み入れた三田村は、若衆の出迎えを受ける。  長年、この本宅に出入りしているからこそ、肌でわかることがあった。  年末年始の慌しさを乗り切って、この大きな家で生活している人間たちもほっと一息ついているところなのか、普段のピリピリとした緊張感がいくらか薄らいでいるようだった。     
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