番外編 拍手お礼14

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番外編 拍手お礼14

 熱いお茶を啜った千尋は、ふうっと息を吐き出す。すると、正面のイスに腰掛けて新聞を開いていた守光が、老眼鏡をズラしてこちらを見た。 「ここで飲む茶も美味いだろ?」 「まあね。でも、やっぱり本宅で、笠野が入れてくれるお茶のほうが美味いな。飲み慣れてるし」 「だったら、飲み慣れるぐらい、足繁くここに通うことだな」 「そして総和会の人間から、珍獣のようにジロジロと観察されるわけか」  千尋の、冗談と皮肉が混じった言葉に、守光は機嫌よさそうに笑う。今日に限ったことではなく、千尋が頻繁にこの本部に出入りするようになってからずっと、守光は機嫌がいい。  老年の域に達し、いくら髪が白く染まってしまおうが、顔に深いシワが刻まれようが、守光の立ち居振る舞いから老いは感じられない。接していて千尋が感じるのは、まるで壮年のような覇気であり、鋭気だ。  外見はいかにも品のいい老紳士でありながら、内から溢れる圧倒的な精力が、守光を怪物のような存在に見せている。  その守光が、傍から見てわかるほど機嫌がいいというのは、大変なことなのだ。     
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