番外編 拍手お礼18

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番外編 拍手お礼18

 ガードレールに浅く腰掛けた圭輔は、目の前を通りすぎるカップルを一瞥して、向かいの建物を見上げる。  小ぎれいな裏通りは、いわゆるホテル街と呼ばれる一角で、景観もへったくれもない、目立てば勝ちといわんばかりの建物が並んでいる。さらに派手なネオンが輝いており、裏通りはさまざまな色彩で照らされている。  目的がはっきりしている場所ともいえるので、独特の雰囲気が漂っているのだが、吸い込まれるように建物に入っていくカップルたちは平然としたものだ。むしろ、そんなカップルたちを眺めている圭輔のほうが、あれこれと考えて複雑な心境に陥っているかもしれない。 「寒っ……」  白い息を吐き出して呟くと、ブルッと大きく身震いする。二月中旬ということもあり、寒さは厳しい。ダウンジャケットのポケットに突っ込んであるカイロがささやかな温もりを伝えてくるが、冷えきった体には物足りない。  せめて熱い缶コーヒーでも買ってこようと、普段であれば行動に移すところだが、実は今、圭輔は気の抜けない仕事の最中だった。  指先でカイロをまさぐっていると、反対側のポケットの中で携帯電話が震える。素早く電話に出ると、〈仲間〉が短く告げた。     
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