番外編 拍手お礼19

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番外編 拍手お礼19

 少しひんやりとした風が吹き込んでくるたびに、車内に残る淫靡な空気を入れ換えていく。  シートに身を預けた和彦は、外へと視線を向ける。街灯すらない公園はあまりに暗く、そんな場所を深夜に通りすぎる人の姿はない。好んでやってくるのは、人目を避けたいヤクザの組長のオンナと悪徳刑事ぐらいだろう。  その悪徳刑事は、駐車場の外に設置された自販機に、飲み物を買いに行っている。  口直しをしたいのだろうなとぼんやりと思った和彦は、次の瞬間には、露骨すぎる自分の思考に一人でうろたえる。  車中での濃厚な口づけと、互いの欲望を性急に愛撫し合った余韻を払拭するには、もう少し時間が必要なようだ。まだ体中が熱い。  なんだか居たたまれない気持ちになった和彦は、思いきって車から降りる。通りに並ぶ街灯の明かりがかろうじて届く駐車場は、それでもやはり薄暗い。ゆっくりと周囲を見回して、ふと、前に鷹津と密会をしたのも、薄暗い駐車場だったことを思い出した。  別に、もっと人気があって明るいところで鷹津と会いたいわけではないが――。     
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