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番外編 拍手お礼22
佐伯がシャワーを浴びている水音を聞きながら、鷹津は裸のまま冷蔵庫を覗き込む。いつもの癖で缶ビールを取り出そうとしたが、〈医者〉の注意を思い出し、舌打ちして水のボトルに替えた。
体には疲労感が溜まっているというのに、胸の内ではいまだに激しい欲情が渦巻き、出口を求めて暴れている。おそらく、思いきり他人を殴った興奮も残っているのだろう。
普段であれば、冷たい水を頭から浴びるのが、冷静になる方法として手っ取り早いのだが、さすがに今夜は無理だ。縫ったばかりの傷口が疼いていることもあり、あまり無謀なことはできない。
分厚い包帯を巻いた右手を見下ろしてから、利き手ではない左手で、ぎこちなくボトルの蓋を開ける。水を喉に流し込みながら、ベッドのある部屋へと戻ると、聞き覚えのない着信音が耳に届いた。
一瞬何事かと思った鷹津だが、足元から聞こえてくることに気づき、佐伯の携帯電話が鳴っているのだとわかった。反射的にバスルームのほうを見るが、当然佐伯に聞こえるはずもない。
放っておこうかとも思ったが、魔が差した。
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