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番外編 拍手お礼23
座卓に頬杖をついた千尋は、広げた写真を一枚ずつ手に取って眺める。
写っているのは、すべて同じ人物だった。年齢は四十二歳ということで、千尋の父親とさほど差はない。だが、外見から受ける印象はまったく違う。
知的で穏やかそう――。端的に男を表現するなら、こうだ。若々しくて男前だとも感じたが、素直に認めるのは癪だ。
とにかくこの写真の男が、里見真也であることに間違いはない。写真と一緒に添付されていた調査書にも目を通したが、腹が立つほど恵まれた経歴で、まさに絵に描いたようなエリートだ。
「この男が先生と、か……」
胸の奥で渦巻くドロドロとした感情に、たまらず千尋がぼそりと洩らすと、向かいに座っている父親が揶揄するように言った。
「いつまでも写真を睨みつけたところで、そいつが先生の〈初めての男〉という過去は変わらんぞ、千尋」
新聞を読んでいるとばかり思っていたが、しっかりと千尋の様子を観察していたようだ。
千尋は、ニヤニヤと笑っている賢吾を睨みつける。
「なんだよ」
「いや、あんまりお前が真剣な顔をしているからな。そんなに、先生の昔の男が気になるか?」
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