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アクアセルシス王国。港町アクティアから船で3日かけて行くことのできる小さな島国。しかし、ここ数百年で起こった地揺れにより島は大きくなった。元々森や渓谷はあったが、地揺れによりできた大地は今は砂漠となっている。オアシスの他に、一つの国があるのだが、どんな本を見てもその他に詳しくは書かれていない。
エードは自らの目で見て知っているが、他にも国や街があったのではないかと思われる瓦礫が幾つも存在していた。調べても何もそこについては書かれていないのだ。まるで、存在を消されてしまったかのように。
そのどちらの国とも、ヴェルオウルは交流をしていない。港町アクティアや、隣国クロイズ王国は交流をしている。しかし、ヴェルオウルはヴェルリオ王国の中心にあるため、宣戦布告をされなければ今後も関わるつもりはなかったのだ。
それなのに、何故アクアセルシス王国の国王は手紙をよこしたのか。どんなに考えても、エードにわかるはずもなかった。この手紙を読めばわかることだろうと思い、階段を上りきったエードはアレースの執務室の横にある私室へと向かいノックをした。
彼女は眠っているかもしれないが、アレースは起きているだろうと考えて小さめのノックだった。寝ている者を起こすつもりは、エードにはない。
室内で人が動く気配がする。暫く黙って待っていると、ゆっくりと扉が開かれた。扉を開いたのはアレースだった。アレースの私室のため、当たり前なのだが今はアレース以外にもいるのだ。
「おはようございます。手紙が届きましたよ」
「早いな」
そう言ってアレースはエードを室内に招き入れた。手紙を持ったまま部屋へ入るエードは、右奥にあるベッドへと視線を向けた。そこには1羽の赤い鳥が座っていた。目を閉じ黙ってベッドの左側に座っている鳥が起きているのか、寝ているのかはわからない。
アレースはベッドの右側に気にすることなく座るので、エードもアレースの側で壁に背中を預けた。一度赤い鳥を見たアレースは、すぐにエードへと右手を差し出した。
その意味がわかったエードは、壁から背中を離すとアレースに手紙を渡した。アレースの目に入るのは、両親からの手紙が先になるようにしてエードは手紙を渡した。
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