プロローグ~鷲獅子編~

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 封を切ると、手紙と一緒に1枚の写真が同封されていた。アレースとエリスの両親、ゼウスとテミスが映っている。その後ろには、オアシスと僅かに映っている者が2人。  オアシスは海を渡った先にある砂漠にしかないことを、行ったことがないアレースでも知っている。手紙を見ずとも、2人が元気で楽しんでいるということが伝わってくる。  両親がどこにいて、元気にしているのか気になっていたアレースは写真の中の両親を見て微笑んだ。写真を見ると、怪我をしているようにも見えなかった。 「写真を撮った者は、強い魔力を持っているんじゃな」 「うおっ! 悠鳥、おはよう。起こしたか?」 「元々起きておったから、気にすることはない」  赤い鳥――悠鳥は、アレースの持っている写真を見て言った。ゼウスとテミスだけではなく、オアシスも綺麗に映っている。見ているものだけではなく、専用のカメラを使えば記憶の中の映像も綺麗に写真に撮れるだろう。  龍達の身分証明書に貼られている写真は、カメラに魔力を送り込みながら、撮りたい映像を思い出しシャッターを切ると印画紙に映るという専用のカメラでアレースが撮ったものだ。  魔力が高い者ではないと使いこなすことのできないカメラだが、その写真を撮った人物であれば使いこなせるだろうと悠鳥は思った。そして、その写真に映る他の2人を見て悠鳥は立ち上がった。 「悠鳥さん、どうかなさいましたか?」 「ああ 卵が冷える!」 「そんなすぐには冷えぬ」  そう言って悠鳥は、座っていた場所――卵の上に静かに座った。現在悠鳥が城のアレースの私室にいるのは、卵を生んだからだ。エリスの家にいてもよかったのだが、アレースが城を抜け出して様子を見に来るだろうことがわかっていたため、卵を生んだ翌日に龍に城へと送ってもらったのだ。  悠鳥の部屋はなかったが、執務室からも行くことのできるアレースの私室で1人卵を温めていた。アレース以外にも、時々エードやラパンり他のメイドや執事達が様子を見に来るため、ゆっくり眠ることができない。  しかし、それは食が細くなってしまった悠鳥を心配しているからだ。果物を持ってきたり、飲み物を持ってきた時だけ最近は人型となる。それ以外は、ずっと不死鳥の姿で卵を温めている。
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