第一章 気づく

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「ヒッデくぅん!!相変わらず見惚れてんねー」もうすぐ夏がくるから、すごく蒸し暑いというのにそんなことはお構いなしで肩にがっつりべったり手をまわしてきたリョウ。ひーやめてくれ、あっつい。 「いや、だってどんなけかわいんだっちゅー話だよ」 もちろん本人には聞こえないように話している。でもリョウは声がでかい、あいつのいう小声はもうましてや、ノーマルボイスだわ。 「で、いつお前はアタックすんの?愛しのアンナに!」 「気が向けばな」 「それいつの話になんだよ」 俺だっていろいろ考えてんだよ。と口を開きそうになったが、とっさに口をつぐんでしまった。アンナがこっちに来た。 「ヒデー、今日、なんかあった?」 脳の思考回路がピタッと停止したのがなんかわかった。声をかけられた時のために、いくつものパターンは毎日考えているけれど、こんな声のかけられ方なんてあるか? 「え、なんもなかったけど。たぶん、おそらく。」 「そ、じゃあごめんね。」 一瞬ではあったが、アンナと会話ができて喜ぶはずの俺だったが、この場合はそうではない。 「え、なにあいつ。」とリョウがぼそっと言う。まったくもって同感でしかないわ。 でも一つだけ。リョウはおそらく気づいていない。 アンナの目が少し、潤んでいた。
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